(1/2)William Cary (1759 ~ 16 November 1825) was an English scientific-instrument maker. 此度は日本ではまったくと言って良いほど知られていない光学器具であるカメラ・ルシダを出品します。1810~20年ごろ製造。多くの方がプレ・カメラ時代のカメラといえばカメラ・オブスクラだと答えるかと思いますが、1806年にイギリスの著名な物理学者ウィリアム・ハイド・ウォラストンによって発明され人気を博したカメラ・ルシダが、化学的な写真が登場する以前に存在していたことは、今日、歴史の陰に埋もれていたので、当然かと思います。2000年代初めにアメリカのデビッド・ホックニーによって失われた絵画制作技術が紹介されてから、アメリカやイギリスを中心ににわかに注目されるようになりましたが、1987年にカメラ・ルシダを徹底的に調査した英語文献が出版されています。「The CAMERA LUCIDA in art and science」(John H Hammond, Jill Austin)今日ではアメリカのkickstarterをきっかけにシカゴのパブロ・ガルシアらによって作られたNeoLucidaが有名ですが、補助装置の無いプリズム式のため、視差(parallax)に注意が必要です。(ロラン・バルトの「明るい部屋」の英題も「Camera Lucida」ですが、あれは全き写真論であり、係る道具とは一切関係ありません)カメラ・ルシダは目の前の光景を鉛筆などで正確に描画記録するためにプリズムをはじめ、二重反射装置のガラスなどで作られました。写実的な新古典主義で最も名を馳せたドミニク・アングルもポートレートの下絵にカメラ・ルシダを使っていた時期があったと指摘されています。また、コットマン水彩紙の由来となった画家コットマンもカメラ・ルシダの愛用者でした。彫刻の肖像の設計図であるドローイングにもカメラ・ルシダは使われていました。絵画制作以外で特にカメラ・ルシダが重宝されたのは、地質学と考古学の分野でした。そして比較的近年まで、科学の分野では、顕微鏡写真の代わりないし写真よりも図説がわかりやすいと判断された場合に積極的に用いられていました。---(2/2)に続くΩゆうパック 60サイズ